ハンチバック

芥川賞受賞作として話題になった作品です。作者が筋疾患先天性ミオパチーとかで、その経験を盛り込んだ作品になってます。最後まで一貫して作者の強い思想が描かれた内容になっています。

ハンチバックとは

せむしという意味です。障害により、背骨がS字に曲がった醜い姿をしています。せむし男が主人公の有名な作品に、ディズニーの「ノートルダムの鐘」という作品があります。内容は、醜い姿の主人公が最後まで報われない話です。性格はとってもいいのですが、醜いゆえに不幸なのです。

今回のこの作品も同様に、姿の醜い主人公は最後まで報われません。

ディズニーモーションピクチャーズ©︎

内容

重度障害を持つ主人公。ベッドから身動きが取れない生活を強いられているが、アダルトサイトに風俗記事を寄稿することで収入を得ている。自らの生活を「涅槃」と自虐する。また、主人公の夢は「妊娠し中絶する」ことと、「生まれ変わったら高級娼婦になる」こと。そして健常者への呪詛と性的願望を日々SNSで発信している。ある時、介護に来たヘルパーに、自分の性的欲求を暴露し続けてきたSNSを特定されてしまう。そこで主人公は、そのヘルパーを1億5千万円の小切手と引き換えに「買う」ことにした。

遠慮のない性描写

露骨な表現がとにかく多く、生々しく、汚いため、嫌悪感を抱く人もいるかも。

障害者でも普通に性欲もあるし、セックスしてみたいし、妊娠したい、というのに一番リアリティを感じられた。

この性的表現を汚いと表するのは、作者に言わせれば、健常者の傲慢と切り捨てられそう。

セックスするしないという極めてパーソナルな問題をテーマの一つとしたところが、汚くも高潔と思えた。

感想

登場する人物全てを不幸にしたいという作者の鋼の意思を感じました。登場人物は誰も報われません。こういう徹底的なニヒリズム作品が芥川賞を受賞し、話題を呼んだのは何故なんでしょうね。

SGDsの一環としてマスコミが取り上げたのもあるのかもしれませんが、単純に、障害者の目線が健常者にとって未知のものだったから、好奇心で注目されたというのもあるかもしれません。


障害者が主人公の作品って大体主人公がいい風に描かれるけど、この作品は主人公の徹底した反社会性に焦点を当てています。作者は本を出せるくらいには善良な市民だけど、周りの人間を不幸にしたい二面性を持っている。


本書は「障害者も人間だ!可哀想な奴みたいに書かないでくれ!」
という作者の魂の訴えかもしれない

「生きていくだけでも大変だぞ」というのが伝わる作品です。気を衒った作品を見たい人はどうぞ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました