東京環状線の駅のホームにて
「ったくよ、世の中不公平だ。なんでこんな国に生まれたんだろ。働かせようとすんなよ、今日もパチ屋で今月の生ポすっちまったよ。金持ちは俺たちに働かせようってか。絶対働いてやんねー、こうなったのも親のせい学校のせいひいては日本のせいだ、やっぱ凶産党のいうように俺たち悪くねえよ、金持ちが悪いんだ、自衛隊に金なんか使ってねーで俺たちに金よこせよ。あーもう死んでやる、日本に生きててもつまんねえよ。いっそここに飛び込んでやる」
「えいっっ」
A氏は電車が来たのを見計らって、線路に飛び込んだ。
「ん?ここは、、」
気がつくと光の階段が見え、見上げると雲に向かって橋がかかっている。
「ここは死後の世界か?」
するとどこからともなく神らしき風貌の髭を蓄えた男性が近づいてきた。
「んー、困るんじゃよ、そう軽々とこの世界に来られては。死後の魂というのは我々がしっかり管理しておるからな。あんたのような不法移民が多くて近頃は治安が悪化しておるんじゃ。」
「あ?んだよそれ、さっさとそっちの世界に入れろよ」
「だからそういうわけにはいかんのじゃ、、また住民が怒って神の不信任決議を出されてしまう、、そうじゃ、転生させてやろう。我ながらなかなかの名案じゃろ?」
「おっ、転生かよ、じゃあ生まれる年代は平成生まれで親が金持ちでしっかり教育に金を使って、生まれつき頭が良くて芸術音楽の才能もあって将来はハーバード大学修士を修めて弁護士でもあり医者でもある大人に育ててくれる家に生まれさせろ」
「んーそれは無理じゃと思うぞ、まあ記憶は引き継いでやるから、一旦転生してみて、気に入ったらそこでどうじゃ?」
「しゃーねーな、早く転生させろ」
ピカッ!光が俺を包んだ
昭和の日本人らしい風貌の男女がこちらをみていた。片方は軍服だ。
「オギャー、ん?ここは?おい神様ー、ここはどこなんだ?」
「1945年の満州じゃな」
「いやダメだろその時代は!だってこれからソ連が攻めて来る時じゃん、ソ連は日本人を見つけたら片っ端から殺害していったから、当時の母親は日本に逃げ帰る時に、子どもが泣いたら居場所がバレるから、現地の中国人に赤ん坊や子供を預けたそうじゃん、満州孤児になりたくねえよ、とにかく次!」
ピカッ!
巨大な船の中、黒人たちが鮨詰め状態で運ばれていた。
「ここは奴隷船じゃねえか!ここはダメだ!次!」
ピカッ!
黒ずくめのターバンを巻いた男たちが軍事訓練をしていた
「ここはISの本拠地じゃねーか、子供のうちから戦闘員にさせられるやつじゃん、次!」
ピカッ!
体が不自然に曲がっておりゾンビのような格好をした若者がたくさん外を歩いていた
「ここはアメリカの薬中一家じゃん、絶対ろくな人生にならねーよ!次!」
ピカッ!
肌の黒い狩人の格好をした男たちが獲物を追っている、、部屋の中はハエが飛び交いひどい匂いだ
「ここはアフリカのどこか狩猟民族じゃねえか、ナシナシ、ってかひどいところばっかりじゃね?」
「あんたがいた令和の日本は飢えもなく社会保障もしっかりしていて、安全で健全な国だったからのう、そんな国は滅多にないぞい、だから平成〜令和の日本に生まれるのは超レアで、それだけでチートみたいなもんじゃぞ。確率で言えば今みたいな家庭に生まれることの方がほとんどじゃ」
「そうなのか、平成〜令和の日本にまれるだけでとても恵まれてるということなのか、、せめて日本に生まれるまで転生させてくれ」
もう何百回何千回と転生を繰り返し、世界の惨状を何度もみてきた。
次こそ日本に生まれることがあれば、しっかり働いて平和を謳歌したい。あの時線路に飛び込んで、せっかくの日本に生まれたという幸運を自らの手で潰してしまったことを後悔した。もっと学生のうちから勉強して大学に入って、いい会社に就職してやる。この気持ちは転生を繰り返すたびに大きくなっていった。
ピカッ!
ここはどこかの病院の新生児室だ。隣には何人か赤ん坊が並んでいる。看護師が私を見つめ、日本語で何か呟いていた。
「やった!ここはおそらく平成〜令和の日本だ!ここまで転生するのにどれだけ転生を繰り返したことか、、神様ありがとよ」
「はあ、長かったのお、自殺なんて何があってもするなよ、今の日本だと自殺しても救われるんだから。その時は行政にでも頼ればなんとかしてくれるはずじゃからの」
赤ん坊の私と目が合いニッコリしてくれた看護師をみて、涙が出るほど元気に泣いた。

